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普化教會・稲葉一水編纂(1915)「尺八獨習案内」

国立国会図書館で公開されています.

普化教會・稲葉一水編纂「尺八獨習案内」
1915年(大正4年)4月24日 克禮堂書店

(著作権保護期間満了)
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東京で出版された本です.「」では「尺八の歴史且つは尺八道の根本義を説き懇切な吹奏法を世に紹介して初學者の好伴侶たらしめやうと思う」とし,またこの本の「樂譜は西洋音譜を基としたもの」と説明しています.

尺八の歴史については,「尺八の沿革」の節に,「尺八は唐の時代に出來たものである。」「日本に渡來したのは入唐の僧が盛に持ち歸つたからである。」「慶長十九年徳川秀忠の時普化宗の掟書が發せられ普化禪宗の基礎が定まつたのである」と,伝統的な言い伝えに則った説明をしています.また同じ説に明治以来の状況として「明治の初年には殆んど其の跡を絶つやうになつたのである。普化宗は廢れたけれども近來は琴絃に合奏する事が盛になり尺八なる樂器は昔時よりも珍重されるやうになつた。」「徒に琴絃附属の娯樂器として弄ぶといふのは大に考へねばならぬ。」という現状認識を述べています.さらに「普化宗」の節では「普化禪師(今より凡千五十有餘年前)が普化宗の開祖である」「法燈國師が入宗して教を受けたのは十六代の張雄である」,また「普化宗々義」の節では「明暗兩頭を坐斷し明暗不到の處んい徹底し茲に一枝の竹管を以て大法輪を轉ぜんとするのである」と説明し,また「普化宗門掟書」の節にはいわゆる「慶長の掟書」を掲載し,さらに「法燈國師覺心傳」の節に「實に國師は我尺八界の大恩人である事はいふ迄もない」と書くなど,伝統的な尺八観に忠実に則った記述がされています.

日本國中宗門本寺」の節には虚無僧寺の詳しいリストが掲載されていますが,出典は不明です.

尺八の吹奏法」の節では冒頭に「多くの種類の樂器の中で習得するに、尺八ほどむづかしいものはあるまい」と書かれ,その視点から独習への姿勢が詳細に述べられています.また「尺八の選擇」の節には「一尺八寸乃至一尺七寸の竹で指穴の大きくない尺八が初學者には吹き易い。」と書いてあります.

尺八の造方」の節には「全體を九半に割り竹の下面即ち關敷(カンジキ)から九半の二倍19/100だけ上に第一孔を穿け其れより上に九半宛隔てゝ第二孔第三孔第四孔を穿け第四孔より九半の半分を上に裏孔を穿るのである」「けれども現今は全體の長さの十分の二強を關敷から上に第一孔を穿け其れより十分の一宛順次に上に第二第三第四孔を穿け第四孔より十分の一の半分強を上に裏孔を穿るのである」と説明し,続いて「尺八造方一般の法則」の節に「現今は一尺八寸を定法とするが昔時は虚無僧尺八と稱へ二尺乃至二尺四寸の竹を吹いたものであつた」「今は老人だが越後明暗寺の門人神保政之介といふ名人は二尺三寸位の大竹で三谷といふ本曲を自在に吹いていた」「明和年間には淺草門に尺八指南を爲て居つた岡秀益といふ名家が六十七才の時自らの愛竹を淺草の御堂に納めた。此の尺八は二尺二寸である」と加えています.ここに示されている尺八の図は以下です.

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音譜解説」と「音譜圖解」では「西洋樂譜を基礎として音譜を説明する」として,音階を1(=ド,C)からの数字譜で示し,尺八での音階を下左の図で示し,ツのメリに相当する音に「1」(=ド)に当てています.独奏ならば問題はありませんが,他楽器との合奏を考慮すると二尺一寸管の音律になります.また,指穴を半開にする場合は,下右図のように穴の上を開けることとしています.メリについては言及がありません.

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なお「追分節」について,「現今の尺八界に悪風潮がある。其は追分節や端唄の吹奏を絶對に禁ずる事である。」「日本音樂の粹しかも最もよく我國民性に適したものは則ち追分節である。且又尺八ほど此曲の表情に好適なる樂器はない。」としてます.


目次
尺八の沿革
普化宗
普化宗々義
普化宗門掟書
法燈國師覺心傳
日本國中宗門本寺
音樂と尺八
尺八の吹奏法
一 尺八の選擇
二 尺八の造方
尺八造方一般の法則
吹奏心得
音譜解説
一 音譜圖解
二 音の長短
音譜練習
 君ケ代
 一つとや
 おいどこ
 四季の歌
 越後獅子
追分節
松前追分(正調)
松前追分(在郷節)
越後追分
本唄
馬子唄
春雨
梅にも春

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