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井關外雅(1920)「外雅流尺八樂解説 完(樂典)」

国立国会図書館で公開されています.

(著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開)
井關外雅「外雅流尺八樂解説 完(樂典)」
1920年(大正9年)12月20日 阪根樂器店・十字屋樂器店
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ロツレチ式の記譜を用いた楽譜を用いた,尺八演奏法の詳細な解説書です.

第一章 総論」の「音の強弱」の項に「世間の人は間々此の高低と強弱とを混同して居る樣であります」として,例えば「此の三味線は良く鳴る・・・音が高い」,「も少し高い聲で歌ひなさい」の表現を挙げていますが,これらは音の理解の問題ではなく日本語表現の問題かと思います.それはそれで味わいのある日本語表現のように感じます.

第貮章 尺八の沿革
支那の唐時代に於て既に用ひられた樣である」,「尺八はかくの如く大昔からあつて常に禁中にて催さるゝ樂に用ひられ居る,又武人とか僧侶などに用ひられ讀經に用ひた事もある」としていて,尺八に関する伝説を採用するとともに,いわゆる雅楽尺八との混同があるようです.また「虚無僧とは禪宗であつて其の本寺は洛東妙安寺である」と記述してます.寺名が明暗寺でないのは,誤解か,誤記か,またはそのような呼称がこの時代まであったのか不明です.本書の発行は京都と大阪ですので,誤解・誤記とは思えません.

第參章 尺八の構造
本書では「二尺一寸を基準とします」とのこと.また「空筒内部面には朱漆が塗つてあつて平滑にしてあります」と記述してありますが,この記述だけでは地塗り管かどうかは不明です.管の穿孔については「全管長を十九等分し・・四の孔は下端より全管長の十九分の十の處にあります,一の孔あ十九分の四,二の孔は十九分の六,三の孔は十九分の八の處にあります,五の裏孔は下端より十九分の十一の處にあります,但し管の工合により音律を調べつゝ穴の位置を少しは調節しなければなりません」として,音律を意識した穿孔の説明をしています.
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第六章 音階、音階名(階名)
甲乙(カンオツ)」の節に「尺八を取つて弱くフーと吹いて御覧んなさい,そうすると朗かなおんもりとした音が出るでせう,此の音は乙の音です」.「今度は・・・息を強く力をいれて吹き込む時は・・・今度はこんな高い音が出たのです,・・・之が甲であります」として,息の強弱で甲乙の吹き分けを説明してます.

第七章 沈り,浮り,半月
沈りの方法」の節に,「之れは顎を下へ引きて顎と共に尺八の歌口を下げるのである,そうすると音が半音低くなるのである」と説明してます.そして,沈りにより各音が「半音低くな」ると書かれています.
浮りの方法」の節には,これと逆に「顎を突出して音を半音高くする事を云うのです」と説明してます.
半月の方法」の節には「半月とは孔を半月形に開けることである,ツの音[壹越]にて一の孔を半月形に開けば神仙の音[=半音ではなく1音下る]となり,レの音[平調]を二の孔にて半月にせば斷金の音[=半音下る]となり,チの音[下無]を三の孔にて半月にせば勝絶[=半音下る]となり,ハの音[黄鐘]の音を四の孔にて半月にせば双調[=半音ではなく1音下る]となります」としています.そして「ツとハの半月と,ツの沈りの直前にあるレの半月とは沈らなければなりません,乃ち沈りで半音と半月で半音と都合一音低くするのであります」とし,一音下げる場合の方法が書かれています.

第八章 音階表
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第十一章 尺八の管長と音律との關係
當流は只獨り二尺壹寸の尺八を基本とし之を基準管器と稱するのである」とし,音名・音階名対照表をみると,尺八の音階と音名については,特にロとツの関係およびチとハの関係を見ても,現在の尺八と同じになっています.
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第十四章 協和音
完全協和音と不完全協和音について,簡単ではありますが,言及されています.

第二十章 替笛(一名換管)
三弦又は琴の調子が數回變る時は替笛をする必要がある事があります」と説明されています.

第廿四章 結論
本書では「當流尺八に關する大要を述べた」としていて,「初學者は別に余の著したる尺八獨習録によりて實地的に遂次練習の歩を進めつゝ其の餘分に本書によりて尚詳細なる知識を得て之を助けつゝ益々深造自得せられんことを望む」と述べています.

巻末の広告に楽譜リストがあり,長唄約54冊,常磐津3冊,清元14冊,俗曲22冊,秘曲・本曲5冊,義太夫24冊,洋曲2冊,筝曲13冊という多数が掲載されてます.「秘曲・本曲」は胡弓の曲を移したものかと思います.


目次
第壹章  総論
第貮章  尺八の沿革
第參章  尺八の構造
第四章  音名(律名)
第五章  雅樂の音名
第六章  音階,音階名(階名)
第七章  沈り(め),浮(か)り,半月
第八章  音階表
第九章  特殊音階表
第十章  甲乙規定 及び連音運指
第十一章 尺八の管長と音律との關係
第十二章 尺八三絃調律表
第十三章 尺八 琴 洋樂器 調律對照表
第十四章 協和音
第十五章 拍子
第十六章 音符
第十七章 休止符
第十八章 音符及休止符圖解
第十九章 諸記號
第二十章 替笛(一名換管)
第廿一章 ナヤシの法 及掛け合ひ
第廿二章 讀譜
第廿三章 君が代讀譜圖解
第廿四章 結論


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