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野田桂華(1910)「新曲尺八獨奏」

野田桂華「新曲尺八獨奏」
1910年5月27日 井上一書堂

国会図書館で公開されています.
(著作権法第67条第1項により文化庁長官裁定を受けて公開)


Noda01  Noda02

本書の章は以下のとおりです.
はしがき
吹奏法
音符
音譜記號
目次 
[音譜]
 唱歌軍歌の部[10曲]
 清樂の部[6曲]
 俗曲の部[32曲]


はしがき」によれば,既に尺八譜は多数出版されていて,その多くは音程は正確に記述されているもののリズムの表記が不完全のため,初心者はそれらの楽譜を用いても演奏が難しいので本書を著したと,本書の出版の動機が書かれています.また,尺八各流派特有の記譜法には依らず,一般的な記譜法を目指したようです.

はしがき
・・・幾多散在せる是等同種の書を繙け、その多くは斯道名手の編述に成るものなれば、音の高低正確にして、教ふること周到、一點の問然する所無きが如きも只惜しむらくは音の長短記號不完全なる爲め、初學の者をして演奏に迷はしむもの尠からず、・・・
・・・音符記號の如きも各流派特種のものと使用せる爲め、一巻の獨習書に由つて習得せし者は、他の同種書を見る能はざるの不便あり、・・・


音譜の解説は以下のとおりです.

音符
従來の尺八獨習書は各(おのおの)特種の記號を用ひたれども本書は悉く西洋音譜となしたり即ち下の如し。
Noda03
この図では,尺八の筒音がヒ(ド,C)なので2尺管の音程かと思います.ただ,当時の尺八は現在の尺八より半音程度低い可能性がありますので,1尺9寸管または2尺管が想定されているのかと思います.

図中の赤字は私の加筆です.この表の中では次のような疑問があります.
1.①から⑫は五線譜ではヒ(ド,C)からナ(シ,B)までの12の音階が半音刻みで並んでいます.ところが,尺八の運指表では,②と③の間,⑤と⑥の間,⑦と⑧の間が,それぞれ1音の間隔になります.
2.上記のため,③以降は五線譜に示された音程と尺八の運指にずれが発生してます.
3.⑩は①の1オクターブ上の音になるはずです.
4.⑪と⑫は通常に使用する運指ではありませんが,現代の尺八では,⑪は⑩から音程の変化がほとんど無く,⑫は乙では甲の①(=⑩と同じ音程)より少し高い音になり,甲では甲の⑩よりほぼ1音高い音程になります.
5.⑬はムと書かれていて五線譜ではシ(B)と書かれていますが,①から⑫の5線譜を参照すれば,ムであればラ(A)のはずです.一方,尺八の運指表の音はド(C)でヒになります.
6.現代の尺八では,⑭は甲の⑩(=⑬)とほとんど音程の変化はなく,⑮は甲の⑩(=⑬)よりほぼ1音高い音になります.
7.図中の括弧書き「(高音の指の・・・・相違す)」の正確な意味は判りません.

なお,掲載されている楽譜はヒ,フ,ミ・・・ム,ナの文字で表記されています.

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