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松室八千三編 「遊芸」

松室八千三編 「遊芸」
1893年(明治26年) 鹿田書店
(文化庁長官裁定を受けて公開)

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明治26年発行の宴会芸の指南書です.

国会図書館で公開されている本の表紙は上記白黒ですが,上記カラーの表紙本も見つけました.ほとんど同じですが,人物の配置が若干異なります.いずれも尺八の演奏者が描かれています.

緒言によれば,「近世に至り・・・・歌舞音樂は交際場裏の花にして・・・歌舞音樂も亦必用ならずや」として音楽演芸の必要性を説き,「師に就くの煩なくして遊藝の秘曲を悟り得」るために本書を用意したとのことです.この時期には師につかない独習書が多く出版されているところをみると,各分野で学習のための師弟関係が整っていなかったのかもしれません.

上記のとおり「師に就くの煩なくして」とは書かれていますが,本書に記載されている各種の芸を一読すると,記述は極めて簡素で,これを読んだだけではとても習得できるとは思えません.「独習」の意味が現在とは少し違っていたのかもしれません.

目次(本書では「目録」)を見ると,現代の目からは宴会芸とはとても思われないものがほとんどです.どのような「宴」が想定されていたのでしょうか?

尺八の項には,フホウエ式の記譜説明がされ,6曲の譜が掲載されています.このうち2曲(「鶴の聲」「黒髪」)が地唄,他は流行歌です.
メリによる音程の調整についての記述はありません.「歌の節を能く覺(をほへ)て其の節に合(あは)せる樣」として,歌の実際の調子から尺八の音程を調整するように書かれているようにも読めます.


[前半略]近世に至りは更に西洋の音樂を傳へ都と■[=邑(むら)]の 差別なく歌舞音樂其盛を極むと謂ふべしされば歌舞音樂は交際場裏の花にして舊友団欒の小集も數百人懇親の大宴にも歌舞音曲の心得ある時ハ酒之が爲めに程能 く酔ひ談之が爲に和らかとなり六かしき議論は形を隱くし興味は春の如くなるべし歌舞音樂も亦必用ならずや今此書は[中略]師に就くの煩なくして遊藝の秘曲 を悟り得べく以て交際を圓滑にするの利益あらん豈に遊藝なりとて之を蔑視すべけんや是を序となす

明治二十六年十月     半學粹史


目 録
  舞踊獨習
  三味線獨稽古
  地歌
  江戸唄長歌
  ちやり舞
  浄瑠理
  手風琴獨習
  八雲琴獨習
  尺八獨習
  剣舞指南
  拳會指南
  茶番狂言
  月琴獨習


◎八尺獨習
[ママ]

[抜粋]
一 吹樣(ふきよう)の事
生きを輕く吹き込むべし強く菩(くるし)げる吹き込む聞(きゝ)にくし尺八のなかに水(みづ)け溜たる時は音色の變(かわ)るものなれば是れをふくべし

十二律の譜
[略す フホウエ式]

一 音色の事
尺八を吹くに付(つい)ては歌により音色の長短(ながみじか)又は高く低う吹く事あり是れを符號を以て記すとも中\/解(わか)しがたく依りて能く解り安く四符號
[註]を以てす
[註 四符號:通常音の外の長音,半長音,極長音,短音を示す4つの符号]
(注意)高低(たかひく)長短(ながみじか)を上手に吹くには歌の節を能く覺(をほへ)て其の節に合(あは)せる樣心掛け吹方(ふくかた)大に早し


楽 譜
  山寺
  十日戎(とうかゑびす)
  高山
  權平(ごんべ)
  鶴の聲
  黒髪

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