« 岸田國士の書評:米川正夫著「酒・音楽・思出」 | トップページ | 夏目漱石「行人」 »

夏目漱石「一夜」

青空文庫に掲載されています.

夏目漱石「一夜」(1905)

男二人と女一人が宿を共にして,夜遅くまで夢の中のような語りあいをします.その時の雰囲気つくりの音に琴と尺八が使われています.

「夢にすれば、すぐに活(い)きる」と例の髯が無造作(むぞうさ)に答える。「どうして?」「わしのはこうじゃ」と語り出そうとする時、蚊遣火(かやりび)が消えて、暗きに潜(ひそ)めるがつと出でて頸筋(くびすじ)にあたりをちくと刺す。
「灰が湿(しめ)っているのか知らん」と女が蚊遣筒を引き寄せて蓋(ふた)をとると、赤い絹糸で括(くく)りつけた蚊遣灰が燻(いぶ)りながらふらふらと 揺れる。東隣で琴(こと)と尺八を合せる音が紫陽花(あじさい)の茂みを洩(も)れて手にとるように聞え出す。すかして見ると明け放ちたる座敷の灯(ひ) さえちらちら見える。「どうかな」と一人が云うと「人並じゃ」と一人が答える。女ばかりは黙っている。
「わしのはこうじゃ」と話しがまた元へ返る。火をつけ直した蚊遣の煙が、筒に穿(うが)てる三つの穴を洩れて三つの煙となる。

|

« 岸田國士の書評:米川正夫著「酒・音楽・思出」 | トップページ | 夏目漱石「行人」 »

尺八資料」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 岸田國士の書評:米川正夫著「酒・音楽・思出」 | トップページ | 夏目漱石「行人」 »