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岸田國士の書評:米川正夫著「酒・音楽・思出」

「青空文庫」に掲載されています.


米川正夫(1891 - 1965)は著名なロシア文学者です.これは米川氏の回想録の書評です.米川氏は筝曲家一族の一人で,箏の演奏も相当のものだったそうです.


次には音楽に関する随想が並んでゐる。
「十六の年から今日まで、まづ琴を手始めに三絃、尺八、謡、小鼓といふ順に手がけて来た」といひ「それもちよつと門口をのぞいて見たといふ程度でなく、かなりなところまで深入りしたものである」
と氏の謙遜癖にも似合はぬ口ぶりで察せられる通りに、そのうちあるものは家元の直系を伝へてゐるとは驚くべきことである。
 私も、或る日招かれて公の席における氏の演奏ぶりを「拝見」したことがあるが、実のところ、私の耳はこの古典的な邦楽器の音色を聴き分ける能力はなかつ たのである。たゞ、内田百間氏との合奏が殊にこの「桑原会」の呼び物らしいので、講堂の聴衆と共に私も小鼻に力を入れて舞台を凝視してゐたにすぎない。
 ところがこれらの随筆を読んで、私は実のところ氏の音楽的天分と薀蓄とに更めて敬意を表せざるを得なくなつたことを告白する。


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