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小栗風葉(1900)「戀慕ながし」

相当に古い本を入手しました.

小栗磯夫(風葉)(1900)「戀慕ながし」春陽堂
1900年5月23日発行
1900年12月20日三版

尺八本曲「恋慕流」を伴奏のように使った311ページの恋愛を題材とした長編小説です.表紙の尺八の絵は大変丁寧で美しいものです.また,冒頭の絵も丁寧に描かれています.この絵の男性の虚無僧姿は,遊郭・料亭を背景にして,当時の虚無僧というよりは歌舞伎の虚無僧のような伊達姿です.お供の美女が持つ楽器は胡弓で,当時としては三味線よりは上品だったはずです.

善積蓼村による「戀慕流」の譜が巻頭に掲載されています.琴古流の記譜法で書かれていますが,1)蓼村が「名古屋地方に行はるゝ戀慕流を我が琴古風に飜案せしなり」と記していること,2)1900年の出版であること,3)犬山市在住の小川儀蔵による「尺八獨稽古」(1891)に掲載されている本曲譜と酷似していること,4)現在の京都明暗寺で演奏されて
いる対山派「恋慕流し」に類似性があることから,この譜は西園流本曲と考えられます.

この本の続編として「歌戀慕」の予告が掲載されています.こちらにも本曲譜が掲載されて
いるのかどうか,可能なら入手してみたいものです.

善積蓼村の本曲譜の解説

由來尺八の本曲に戀慕ながしなるもの無し,されど中世一節切の名手にして一思庵と云へる人そが本曲十二曲を創作なせし中に戀慕曲あり,既に一節切と尺八と器其ものゝ類似をを見ると共に尺八の本曲鈴慕流の訓音自ら戀慕流に似通へるより,俗謡或は院本等皆相混同して傳ふるに至れるなり,今日關西に用ひらるゝ尺八の戀慕流は,或は一節切の戀慕曲に胚胎せし後世の作にや,琴古流の本曲には固より尺八の正系を受けたる流派に嘗て見ざれば,爰[ここ]に巻頭に出せしは名古屋地方に行はるゝ戀慕流を我が琴古風に飜案せしなり,余固より斯道に熟達せるものにあらざれば,殆ど其曲を成さゞるを危ぶむ,斯道の大家願はくは斧正の勞を惜み給ふなかれ,

子の年五月                             蓼 村 生 識

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