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田中清一「詩集 生命の戦士」

田中清一(1922)「詩集 生命の戦士」南天堂書房

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国立国会図書館で公開されている作品です.
(文化庁長官裁定を受けて公開)

田中清一(喜四郎)1900-1975

当時の代表的詩人福田正夫が序文を寄せています.その序文では,本書を「若い現代人の叫びに,火のやうな生命の憧憬と燃えるがやうな戰ひの血,それらの新時代への苦悶と道程を示してゐる.」と紹介しています.

尺八が表題に含まれている詩「尺八の哀音」では,五十歳くらいの妻子を連れた老乞食が東京小石川の広い通りで尺八を吹いています.「ものうい春の暖かい一日」の「花見時」,「爛漫と咲き亂れてゐる/淡紅の櫻の花が/涯しない碧空に/くつきりと浮んでゐる」街中の「美しい丹塗の赤い門」の前で,「老乞食が/隣にゐる妻や子を/忘れたやうに/一心に尺八を吹いて」います.その音色は「りゆうりようたる尺八の哀音」「おお咽び泣く尺八の哀音」と形容されています.世俗の中にあり,しかし人の世の賑わいから外れ,家族も忘れたかのように,尺八は哀しく孤独に吹かれています.そしていきつくところ,「りゆうりようたる尺八の哀音が/春の暖かい空氣にとけこんで/寂しい響きをつたへてゆく

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