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岡本綺堂「二階から」

青空文庫で公開されている小説です.

岡本綺堂「二階から」

初出は1915年(大正4年)~1916年(大正5年)

まるで引き籠りのような生活をしていると述懐している語り手が,二階の部屋の中から外をみた様子を日記風に記しています.

主人公(作者?)の家は四谷街道沿いにあるといいます.英国大使館が眺められる場所らしい.近所に寄席の「青柳亭」というのがあり,また、太宗寺というお寺もあったといいます.おそらく,皇居から西に新宿駅に向かって進んだその途中あたりと思われます.

その二階の部屋の窓から見える正月の夜の風景です;

夜は静です、実に静です。支那の町のように宵から眠っているようです。八時か九時という頃には大抵の家は門戸を固くして、軒の電灯が白く凍った土を更に白 く照しているばかりです。大きな犬が時々思い出したように、星の多い空を仰いで虎のように嘯(うそぶ)きます。ここらでただ一軒という寄席(よせ)の青柳 亭(あおやぎてい)が看板の灯(ひ)を卸(おろ)す頃になると、大股に曳き摺って行くような下駄の音が一(ひ)としきり私の門前を賑わして、寄席帰りの書 生さんの琵琶歌(びわうた)などが聞えます。跡(あと)はひっそりして、シュウマイ屋の唐人笛(とうじんぶえ)が高く低く、夜風にわななくような悲しい余 韻を長く長く曳(ひ)いて、横町から横町へと闇の奥へ消えて行きます。どこやらで赤児(あかご)の泣く声も聞えます。尺八を吹く声も聞えます。角の玉突場 でかちかちという音が寒(さ)むそうに聞えます。

書生が琵琶歌を唄う一方で,どこからか尺八の音が聞こえてくるといいます.いずれも,どんな曲かは不明.文脈から推測すれば,琵琶歌の方は威勢の良い若者の唄,尺八の方はかすかに聞こえる静かな曲でしょう.


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