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小山慶太(2012) 「寺田寅彦」 中公新書

最近,本屋さんに入ることがほとんどなくなってしまったのですが,その分,たまに入ると収穫があります.先日偶然に入った本屋さんで,寺田寅彦の評伝を見つけました.

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寺田寅彦(1878-1935)は日本の実験物理学のパイオニアです.25才で東京帝国大学の講師になり,30才のとき理学博士の学位を取得します.実は,この時の学位論文が1907年(明治40年)の論文「Acoustical Investigation of Japanese Bamboo Pipe, Syakuhati (日本の竹製管楽器,尺八の音響学的研究)」です.

20世紀初頭は,アインシュタインが特殊相対性理論を発表したりして,理論物理学が一気に進んだ時代なのですが,若き寺田はそのような方向も見据えながら,事実,後日そのような分野での実験物理学の世界レベルの研究を発表するのですが,一方で,日本的な物理学の確立という志も持っていたようです.このためでしょうか,生涯で最初の主要論文が尺八に関するものになったようです.

英語で書かれたこの論文は,しかし多才な寺田の好奇心の中から産まれたものの一つにすぎず,残念ながらその後に尺八の研究に発展はなく,単発の論文で終わってしまいました.

この論文は,尺八の音程の解析が中心になっています.一方,この論文の中でも指摘しているように寺田は尺八の音色にとってCharacteristic color of its noteが重要であることに十分に気付いていたものの,当時の音響分析技術ではそれを解析することは不可能だったでしょう.

37ページの論文の最初の2ページは以下です.これを読むと1907年(明治40年)の日本の科学者の英文として,多少のぎこちなさに目をつぶれば,たいしたものだと感心しました.ただ,記述内容は当時の尺八界での通説に従ったもので,現在からみれば正確ではありません(論文本体の音響学的分析にも誤謬があるという意見も聞きますが,それを含めて,時代の産物ということができます).

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