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国枝史郎 「剣侠」

国枝史郎 (1936)「剣侠」

江戸時代文政年間(1818年~1829年)の設定.主人公が敵を追って江戸から木曽に向かう途中の追分宿の風景です.追分宿は中山道の江戸から二十番目 (軽井沢は十八番目)の宿場で現在は軽井沢町の出来ごとです.尺八を吹く虚無僧が「旅仕度に深編笠の、若い武士」かどうかは明確ではありませんが,いずれ にせよ,深編笠は自分を隠す道具.

 旅装を解き少しくつろぎ、それから障子を細目に開けて、澄江は往来の様子を眺めた。駕籠が行き駄賃馬が通り、旅人の群が後から後から、陸続として通って行き、鈴の音、馬子唄の声、その間にまじって虚無僧の吹く、尺八の音などが聞こえてきた。
 と、旅人の群に雑り、旅仕度に深編笠の、若い武士が通って行った。
「あッ」と澄江は思わず云い、あわただしく障子をあけ、身を乗り出してその武士を見た。
 肩の格好や歩き方が、恋人主水(もんど)に似ているからであった。


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