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文部省宗教局編(1921-1926)「宗教制度調査資料 第1-19輯」

国立国会図書館の近代デジタルライブラリーで公開されている文部省宗教局編(1921-1926)「宗教制度調査資料」に江戸幕府の虚無僧寺関係資料が見つかりました.

この資料では,神道・仏教と一部キリスト教の各宗・各宗派の,内部組織等の内規などが調査され,列挙されています.政府による宗教法人管理のための調査の成果だろうと思います.

このうち第19輯は国内の宗教制度の歴史が概観されています.これによると,「上代以来新しき宗派の起る時は,必ず勅許を仰いだ」とし,徳川幕府は「新しき宗派は原則として之を禁じた」,そして明治時代になってからの変化として,江戸時代に厳禁されていた日蓮宗の不受不施派と講門派が公認され,「江戸時代に存して居つた」普化宗が廃止させられたと記述されています.明治になって宗教界に大きな変動がありましたが,政府から廃止させられたのが普化宗だけだったというのは意外な印象を受けました.また,本文では前記のとおり,普化宗は「江戸時代に存して居つた」と書かれていて,「公認されていた」とは書かれていませんし,公認されていた宗派のリストにも含まれていません.虚無僧集団が組織化されたのは江戸時代に入ってからですが,普化宗が「新しき宗派」だとすると,それは禁じられる対象の宗派になりますが・・・?

江戸時代の文書もまとめられています.
 第5輯 江戸時代ニ於ケル住職任免ノ手続
 第8輯 江戸時代宗教制度年表
 第10輯 江戸時代ニ於ケル寺院制限政策
 第12輯 享保七年諸宗法度書 
 第16輯 江戸時代宗教法令集
残念ながら,第16輯以外,これら江戸時代資料は国会図書館に無いようです.第16輯には以下の虚無僧関係文書が掲載されています.第16輯の「例言」によると,「徳川幕府ノ法令ト称セラレルルモノノ中ニハ,往々ニシテ疑ヲ挿ムベキモノアリ.ソノ明カニ偽作ト考へラルルモノハ,ココニハ之ヲ除外セリ.」とありますので,おそらくこの理由で「慶長掟書」が掲載されていないのでしょう.

ところで,これら江戸幕府の公文書には「虚無僧」,「一宗」などの言葉はありますが「普化宗」という言葉は使われていません.はたして江戸幕府は「普化宗」を宗派として認めていたのでしょうか? 「江戸時代に存して居つた」(上記引用参照)というのが実情でしょうか.そういえば偽書「慶長掟書」にも「普化宗」の言葉はありませんので,この点についてはお互いに阿吽の了解があったのでしょうか?

99 虚無僧覚
1677年(延宝5年)12月18日
本寺の住職決定は師弟関係ではなく候補者の器量について本寺と末寺の弟子たちによって決めること.また寺で弟子を採る場合は,罪人を採ることなく,本人を確認し,証人を取ること.寺の関係者で寺の規則に背いたものはその罪に応じて処分し,大きな罪の場合は奉行に報告すること.

165 虚無僧使用深編笠ニ付触書
1758年(宝暦8年)10月
一月寺と鈴法寺の両寺で用いている深編笠については,今後,それを売買には虚無僧寺の印鑑が必要.

166 虚無僧取扱ニ付内達
1759(宝暦9年)閏7月
最近,偽虚無僧がいたので,本則の発行について一月寺と鈴法寺に質問した.寺の印鑑が無ければ網笠の売買が出来ないはずだが,そうはなっていない.また一月寺では本則の扱いにも不適切な点があった.そこで古来からの寺法を守るよう両寺に申しつけた.

167 虚無僧本則付与之定
1759年(宝暦9年)
一月寺では武士以外にも竹名は与えていなかったが本則を与えていた.鈴法寺では本則は与えていなかったが竹名は与えていた.今後,両寺では本則を与える場合は武士に限るとし,人品と過去の経歴を確認し,また証文を取って本則を与えることとする.

178 不法之虚無僧取計方触書
1774年(安永3年)1月23日
村々を虚無僧修行の姿で訪れ,百姓などに布施をねだり,宿を要求し,それが叶わぬ場合に尺八で打つなどの不法を働く者がいた.虚無僧であっても不法の場合には捕えて役所などに召し連れること.

219 虚無僧取締ニ付触書
1847年(弘化4年)12月26日
安永3年(1774年)に触書を出したが,最近.不法狼藉を働く者が多い.武士で素行の良い者であり,証人を立てたものを弟子にすること.修行先では志程度の布施を得て,宿も相談の上で提供されることなど,先の触書どおりと確認する.不法の者はその場所に留め置いて訴え出ること.

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