豊島与志雄「浅間噴火口」
「青空文庫」に上掲されている豊島与志雄「浅間噴火口」(1938)に尺八が出てきます.
アパートの家主椿正枝とそのアパートの住人の一人,朝鮮半島(たぶん平壌近郊)出身の大学生,李永泰との交流を描いた短編です.
李は小さな印刷所で働きながら明治大学法科に通っていました.その時代の常として警察署の特高の訪問もありましたが,「なかなか勉強家で有望な青年らしい」と言われていました.
この李が部屋の柱に1管の尺八を下げていました.この小説の中で尺八は朝鮮半島出身の若者と日本人をつなぐ小道具の一つとして使われています.
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正枝はその時、不思議に尺八のことを思いだした。
「尺八がかかっていましたね。どうしてあんなところに下げとくんですか。」
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・・・・・
「よい竹です、見て下さい。」
李はすぐ立上って、尺八を取りに、急いで二階に上っていった。
正枝はほっと溜息をついた。それから和やかな微笑を浮べた。
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ところで;
尺八は江戸末期まで国内の音楽界の中では,傍流というか,むしろ異端の楽器で,それを演奏していた虚無僧は社会のoutsiderだったはずです.それが明治維新後50年間に日本の伝統音楽の象徴的な存在に価値が変わってしまったのはどのような理由だったのでしょうか?
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