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吉田晴風・前田佳風「尺八の楽理と実際」

吉田晴風・前田佳風(1939)「尺八の楽理と実際」(交蘭社)を古書店からの通販で入手しました.先日の「吉田晴風の一生」を読んだ続きです.予想以上にと言っては失礼ですが,ここまでしっかりした本だとは思っていませんでした.

一方,記述内容はほぼ予想どおりで,輸入された西洋音楽理論の音名を尺八の音名に置き換えたもので,「尺八の・・・実際」とは言っても,尺八という楽器に関する研究成果が含まれてはいませんでした.もちろん楽器の研究が進んでいた時代ではないのですからそれは当然ですが,そうは言っても,伝統的な製法で作られた尺八(一部の最近の尺八を除いて)は自然に音を鳴らせた場合にその音階はテレビ(当時で言えばラジオ,ピアノ,オルガン,バイオリン・・・)から聞こえてくる音楽の音階といくつかの音で違うということは聞き取れるはずです.尺八だけでなく三絃や箏の演奏音階も,素直に聞けばピアノのように安定したものではないこともそれほど困難なく聞き取れるはずです.本の記述では音階の周波数を有効桁数5で計算しながら,実際の音との比較作業がおろそかになっているところに,この時代の邦楽界の雰囲気が感じられるような気がします.

邦楽界からの音楽理論と言うより,洋楽界から邦楽界を眺め,不可解に感じられる邦楽界をなんとか説明をしようとしたという印象を受けました.西洋から輸入された理論をそのまま日本の伝統に応用してしまったことは,その時代としてやむをえなかったものの,西洋の音楽理論も当然ながらもともとは演奏音楽の分析から始めれられていることを知っている現代人としては残念という気持ちをぬぐい去れません.

もちろん明治~昭和初期の西洋文化の輸入がしばしば表面的なものだったということは音楽理論だけではありませんので,これも経過点での重要な業績のひとつとし,あとに続く者がそれを乗り越えればこの大きな業績に敬意を表することになるだろうと思います.

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